これからどう対応していくのか、業界の動向に注目が必要ですね。
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◆くぎ曲げはパチンコに必須だが違法
11月7日に宮城で、翌々日の9日には京都でと、行政によるホールの摘発が相次ぎました。容疑は風営法違反の未承認変更、くぎ曲げです。パチンコにおいて“くぎ”は入賞率の良し悪しを左右するものであり、これを「曲げる=調整する」ことは出玉の管理、つまりは営業面で必要不可欠なもの……というのが業界内での常識。多くのホールで日々行われている店長などの管理者にとっては当たり前の仕事でもあります。
そんな日常業務で摘発されたとしたらすべてのホールが対象になってしまい、「業界自体が成り立たなくなる可能性もあるのでは」と思う人もいるでしょう。でも実際には、そうはなりません。
くぎは稼働している間はつねに玉が当たり続けることで、徐々にではありますが自然と曲がっていきます。となると本来の形、現状では納品段階の状態ではなくなってしまい、これはこれで本来の形と違いますから違法状態とされる怖れがあるわけです。
そこでメンテナンスとして元の形に戻すための、くぎ調整が必要になってきます。行政側はこれについては特にあれこれ言いませんが、メンテナンス=利益調整のためのくぎ調整については厳しい姿勢で臨んでいるわけで……。今回のニュースは、改めてそのことを業界に示したと言えるのではないでしょうか。
◆くぎ曲げとソープランドは同じ次元の話か
パチンコ業界と同じく、風営法に関わる業種としてソープランドがあります。これも現実的にはあんなことやこんなことが行われていますが、あくまで自由恋愛という「たまたま客と嬢がその場で恋に落ちてしまった」という建前で黙認されていますよね。だからといって「行政側として完全に認めているわけではない」ということを示すためなのか、定期的に管理売春で摘発しています。
くぎ調整も同様で、メンテナンスという建前で黙認しつつも、あまりに目に余るようだとしっかり摘発して押さえつけておく。警察行政は風営法だけではなく、例えば道路交通法関連でも現場の判断で少々のスピード違反は見逃してくれたりと、悪質性やその場の状況などで柔軟に法規を運用しているなという印象です。
◆規則ではくぎをどう扱っているのか
そもそも規則において、くぎは「概ね垂直」という曖昧な表現しかありません。だから見た目で明らかに曲がっているものは一発アウトだとしても、微妙な角度ではどこまでが概ねなのか判断がつきかねるもの。新台導入時には行政による検査が行われますが、遊技台の製造番号をチェックして終わりということがほとんどです。
でも一部の担当官は角度を計る器具を持参して厳密にチェックすることもあり、そんな担当官がいる地域ではあっという間にホールの間で情報が共有され、通常は閉店後の納品直後に行うくぎ調整を開店前の検査後にするなんて話もあります。
◆パチンコメーカーが作る「くぎ確認シート」とは
そのような検査官にとって、もっと明確で利便性の高いツールになっているのが「くぎ確認シート」でしょう。これは旧規則機(CR機)時代の後半、2010年代半ばから型式試験時と営業時で遊技機の性能が異なるとして、メーカー側によるくぎ曲げが問題となったタイミングから導入されたもの。ざっくり言うと型式試験は大当り出玉の割合が少なくなるようなくぎに調整し、実際の営業時にはその逆の性能になるようにしたものですが、大々的な遊技機の撤去など業界的には大騒動となりました。
それまでは新台が納品、設置されたらメーカーや販売会社の担当者が営業くぎに打ちかえるのが慣例でしたが、そういった作業もこれをきっかけにぱったりとなくなり、同時に本来の性能を担保したくぎの状態を確認できるようなシートも付属されることに。担当官がこのシートを盤面の該当部分に当てたとして、ちょっとでもずれていたら即アウトになるだけに、ホール側も日々のメンテナンスでは慎重に扱っていることと思います。
ただ多くの店長は「シートの範囲内でも十分に出玉の管理はできる」と話していますから、くぎ確認シートの存在はメンテナンスと称した「くぎ曲げ≒くぎ調整」の、どこまでが適法でどこからが違法になるのかのガイドラインになったとも言えるでしょう。
◆なぜ行政は今回のくぎ曲げを問題視したのか?
今回摘発されたホールがどこまで曲げていたかは存じませんが、どうやらネットの書き込みなどを見る限りは特に一般入賞口付近を潰していた模様。一般入賞口はメーカーを巻き込んだくぎ曲げ問題でも重要視された部分で、玉持ちを左右する、つまり投資ペースを遅くして射幸性が低くなるベースに関わる部分ですから、行政側としても見過ごせなかったのでしょう。
業界の健全化を推進している団体も、立ち入り検査の際には重点的にチェックするところでもありますから、潰せば利益が上がりやすくなるとはいえ、やっぱり一般入賞口付近を調整するのは悪手であると言わざるを得ません。
◆ヘソをがばっと開けてくれたら……
一般入賞口を潰した分、ヘソをがばっと開けてくれていたらファン心理としては優良店だなと思います。でも残念ながらそんなホールは見たことはなく、くぎ確認シートというガイドラインを無視しているような遵法精神のないホールは、色々な面でやっぱりダメなんだろうなと受け止めておいたほうが良さそうです。
文/キム・ラモーン
【キム・ラモーン】
ライターとして25年のキャリアを持つパチンコ大好きライター。攻略誌だけでなく、業界紙や新聞、一般誌など幅広い分野で活躍する。
◆スマスロが遂にホールデビュー
2022年8月の本稿で次世代パチスロであるスマートパチスロ(スマスロ)について紹介させていただきましたが、いよいよ11月21日から全国のホールで導入が始まります。
改めてスマスロって何ぞやと軽く紹介すると、遊技メダルが不要になるのがこれまでのパチスロとの大きな違い。これまでは台の横にあるメダルサンドへお札を入れ、20円貸しで千円投入なら50枚のメダルが出てきて、それを使って遊技するというのが基本でした。
でもスマスロではメダルサンドが専用のユニットになり、お札を入れたら枚数分の情報がスマスロに送られて一切メダルを使うことなく遊技ができます。出玉情報もユニット側に送られ、景品に交換する場合にはユニットから出てくるカードをカウンターに持っていくだけ。
誰が触ったのかわからないメダルがなくなるというのは、ウィズコロナの時代にピッタリですし、利便性も飛躍的に向上するのは間違いありません。やっぱりメダルを触ってないと遊んだ気がしない……という、頑固な人もいるかもしれませんが、そうは言っても便利さを覚えてしまえば自然とそちらにシフトしていくのはキャッシュレス決済などで実証済み。
沖スロみたいなメダルの大きさが魅力のひとつであるジャンルに関してはどうなるかわかりませんが、メダル機も平行して作られるので機械の特性によって棲み分けわれていくのかもしれません。
◆出玉情報は管理されるが……
そして、ただ便利なメダルレスになるわけではないのがスマスロ。専用のユニットが必要とされる大きな理由が、出玉情報の一元管理にあります。以前の本稿でも紹介しましたが、何かが変わるときに必ずと言ってよいほど出てくる「射幸性の抑制」が、スマスロにおけるそもそものスタート。
個々の台の出玉情報はメーカー団体が設けるセンターに送られ、過度な出玉がないかが常に監視されるようになります。また過度の射幸性が抑えられているはずの規則で作られている6号機とはいえ、何かが間違って想定外の出玉があるかもしれない。
そんなことが起きないよう担保するのが、コンプリート機能。これはスマスロだけではなくメダル機にも搭載されることになっていますが、当日の差枚が1万9000枚を越えないようにするもの。具体的には1万9000枚に達したら打ち止め状態となって台をリセットしなければ再稼働できないというもので、「枚数が近づいた状態で間もなくコンプリートしますよ」的な表示をすることでユーザーを混乱させないようになっています。
◆「コンプリート無効化」をするホールはあるのか
ただその表示が出たら電源をオンオフすれば枚数はリセットされてもAT状態は保持されるそうなので、もしかしたらそんなサービスをするホールが出てくるかも……。まぁ、そういう行為をした場合にはセンター側にバレるようになっていますが、そのペナルティが果たして実効性があるのかどうか。
特にパチスロファンにとっては年に一度のお祭りとして定着している三重県の大晦日から元旦にかけてのオールナイト営業では、コンプリートを無効化するサービスをするようなホールが出てくる可能性も否定できません。ファン側としては正直ありがたいですが、やはり決めたことは守らないといけないですしね……。
◆スペック面が大幅に向上し万枚も射程圏か
いずれにしても出玉情報を管理することで射幸性を抑制しつつホール側の不正を防止するスマスロは、業界としては(行政側としても?)積極的に導入していきたいという意向があります。でも導入するためには専用ユニットが必要で、ホール側としては余計な設備投資が必要になります。
それでもスマスロ第一弾として11月21日導入の新機種があっという間に完売してしまう最大の理由は、スペック面の向上。
5号機末期からその概念が導入され、6号機のAT機やART機といった指示機能(押し順ナビ)搭載機には必須の「有利区間の内規」が、スマスロではさらに緩和されます。
有利区間の枚数についてはファンからも好評である6.5号機の差枚で2400枚を継承しますが、ゲーム数は完全に撤廃(6.5号機では4000ゲーム)。これで仮にリセット時からじわじわと数日かけて吸い込ませ、その分を一気に出すことで一撃万枚なんていうのも可能になります。
もしかしたら5号機以上の、ひょっとしたら4号機にも匹敵するような出玉も夢ではありません。だからこそスマスロに対するファンからの、そしてホールからの期待は高くあっという間に完売している状況になっています。
◆スマスロでV字回復期待も休廃業を選択するホールも
またスマスロを導入するためには絶対に必要なユニットが、世界的な半導体不足の影響から需要に対して供給数が圧倒的に足りていないという問題もあります。スマスロ第1弾はユニットとセットで導入しなければならないだけに、現時点で激しいユニット争奪戦がホール間で起きているのです。
これはちょうと30年近く前のパチンコCR機黎明期に似た状況で、やはり力のある大手が率先して確保している模様。そんな動きに白旗を上げたのかどうかは定かではありませんが、業界が期待するスマスロでV字回復というタイミングを横目に休廃業を選択するホールも少なくないようです。
◆スマートパチンコ導入でさらに休廃業が増えるか
来年にはパチンコの次世代機であるスマートパチンコ(スマパチ)も登場予定で、ユニット不足に拍車がかかりそうですが、これで大手と中小との格差がさらに広がらないことを個人的には願いたいもの。ただ中小に該当するホールの人は、先に導入されたら間違いなく客を奪われてしまうと話していただけに、よりいっそうの二極化が進み、結果として休廃業に追い込まれるホールがさらに増えることになる可能性は高そうです。
最後になりますが、スマスロもスマパチの特性として玉やメダルの補給など付随設備が不要という点があります。これによって新規店舗を作る際にコスト面の軽減だけではなく、少台数かつレイアウトフリーな店作りもできてしまうわけで。例えばカフェのような空間に数台の遊技機も置けますから、採算性はともかくとして新しいファンの開拓も期待できます。
でもそういう店舗を展開できるのも、やっぱり大手だけになるでしょう。となると店舗数が増えることはあっても、より大手法人による寡占化が進んでいく。それが業界や行政の望む形であったとしても、なんだか寂しい気持ちになるのは筆者だけではないと思います。
文/キム・ラモーン
【キム・ラモーン】
ライターとして25年のキャリアを持つパチンコ大好きライター。攻略誌だけでなく、業界紙や新聞、一般誌など幅広い分野で活躍する。